読書教育―フランスの活気ある現場から

読書教育―フランスの活気ある現場から読書教育―フランスの活気ある現場から
辻 由美

みすず書房 2008-04
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フランスの読書教育を紹介するエッセイ。思ったより読みやすくてすぐ読めた。主な内容は、児童・生徒が審査員となる文学賞について。特に「高校生ゴンクール賞」には興味を引かれた。
高校生ゴンクール賞は、ゴンクール賞(日本でいう芥川賞みたいな感じの文学賞)にノミネートされた候補作十数冊を高校生(パリ全国で2000人とか)が読み、議論を重ねて独自に受賞作を選ぶというもの。しかもこれは正規の授業時間内で行われる。フナック書店という大手チェーンが、新刊本を提供し、イベントの費用ももつ。マスメディアにも注目され、高校生ゴンクール賞受賞作は本家ゴンクール賞の受賞作に負けず劣らず売れるのだとか。(もちろんダブル受賞もたびたびある)その責任の重さがまた高校生達にいい緊張感を与えている。
期間中に開催されるイベントの中には、作家本人と会って質疑応答できるというのもあるのだけど、生徒達の多くが「一番印象に残っていること」としてこのイベントを挙げるのが、へえ〜という感じだった。このイベントをきっかけに生徒達の雰囲気も変わり、読書に没頭していく生徒が増えるのだそうだ。なるほどね。
この本で挙げられている事例に共通するのは、現場の国語教師や司書教諭たちが積極的に(ゲリラ的に)立ち上げた企画が定着したものだということ。また、書店や図書館、NPO、教育省当局にマスメディアなど、様々な人と組織が連携しているのも印象的だ。読書教育の裏に移民問題がちらつくところも、考えさせられるものがあった。
うーん、面白い。これは盛り上がるでしょ。こういうの日本でもできないかな。何かやってみたいな。とりあえず次回の芥川賞はノミネート作品からチェックしてみようかしら。いや、今回の分も?年二回ってちょっと忙しいなぁ。むしろドゥマゴ文学賞でいくか。