地震

ちょうどその時は東京多摩地区にある勤務校の研究室で、パソコンに成績の入力をしていた。揺れ始めて、思ったよりも大きいので作業用の大テーブルの下に3,4人で隠れた。他の人は自分の机や椅子の下に頭を入れた。
揺れはおさまらず、どんどん大きくなった。本棚がカタカタ、ビシビシ、と音を立てて、積んであった本が崩れた。大震災が来たのか、このあと棚が倒れ建物が壊れるところまで行くのか、不安が初めて実感として湧いた。「子供が心配」と繰り返す同僚もいた。
揺れがおさまって、自分の席を見ると、棚の上から落ちてきた本が3,4冊。ここに座ってたら当たってたかも。そのうち一冊は時枝誠記の『国語学原論』だった(笑)。
震源地は東北地方とのこと。東北が震源で、東京でこれだけ揺れるんじゃ、向こうはどうなってるんだ?
避難を指示する放送が入った。歩いてグラウンドに出る。防火扉が開いていたのにびっくりした。揺れで動いたのだろうか?
外に出ると、部活で登校していた生徒たちが150人ほどいた。試験休み中で、生徒の人数が少なかったのは不幸中の幸いだった。クラブごとに点呼をとる。電車が止まっているとの情報。各部、着替えて荷物をまとめ、体育館のフロアに待機するように指示する。
ひとまず研究室に戻り、成績つけを済ませる。頭がまわらず四苦八苦。
夕方になり、再度招集。JRは今日中の復旧は無理とのこと。教員も帰れない者は泊まり、帰れる者は帰って早朝出勤ということに。私も泊まり。体育館が改築された後で良かった。古い体育館だったら真っ先に崩れていそうだが、今の体育館は校内で一番安全だろう。おまけに暖房も入る。
テレビでは津波の大惨事を放映している。家が燃えながら流されている映像に絶句した。
待ち時間に思わぬ役目を果たしたのは、授業で書いたショートストーリーの作品だった。生徒達が「先生、何か面白い話してよ」「っていうかみんなのショートストーリー今読みたいよね」と言うので、学年全員分の作品を持ってきてあげると、かなりの数の生徒が喜んで読んでいた。いやー、こんなところで役に立つとは。
食事は学食から弁当が出されるという幸運。他校では先生方が炊き出しをされていたそうだ。方面毎に生徒の番号と氏名を確認。保護者が迎えに来ると、その都度チェック。夜になり、非常用毛布を配布して消灯。教員も交代で番をした。