cocoon感想つづき・ひめゆりつれづれ

COCOONCOCOON
今日マチ子

秋田書店 2010-08-05
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今日マチ子氏がTwitterで「自分では戦争漫画ではなくて過酷な状況下でエゴを貫く漫画のつもりだったのですが、そうでもないみたいです。」とつぶやいていたのを読んでいろいろ腑に落ちた。後書きを読むにそっちが主題かなとは思ったけど、明確にそういう意識で描いてたんだなぁ。その線で読むと主人公の最後のセリフなんか実に素晴らしい。
単に戦争モノの迫力で勝負するなら、そりゃ水木しげるの戦争漫画ひめゆりの証言映画にはかなわないわけで。そこは体験の重さというのが絶対的にある。でも「少女のエゴ」「砂糖で鉄は錆びるのか」という切り口で伝えるのは、今のこの作家だから出来ることかも知れない。
ここで少し脱線して、つれづれに思うのはひめゆりをはじめとする学徒隊の先生のこと。『cocoon』で先生が登場するのは、まだ学校にいた時に蚕について主人公に教えるシーンと、看護隊の解散を告げるシーン。漫画は少女視点なので先生の心情は語られないが、それまではどんな授業をしていたのか?授業が満足にできない中で何を感じていたのか?生徒達を動員することをどう思っていたのか?解散した後、先生自身はどのように行動しどのような運命を辿ったのか?
前にもちょっと書いたけど、先生は学徒隊を「引率」しているのね。私達が生徒を試合や遠足や修学旅行に連れて行くのと同じ言葉が使われるのを聞いた時は衝撃を受けた。自分がそこにいたかも知れないと想像するとき、今や生徒の側よりも教員の側に気持ちがまずいく。自分が教員であるせいか、単に歳をとったからか。でも、学徒隊を引率していた先生の肉声って今までに聞く機会がなかった。どんな風に思っていたのか、知りたいと思う。仲宗根政善先生の手記とか読んでみようか。