高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院

高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)
水月 昭道

光文社 2007-10-16
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時間とお金を使って高度な知識を身につけても、就職するポストがない。非人間的な条件で使い捨てられる博士達。失業率と自殺・行方不明率の異様な高さ。彼らこそは大学院重点化という名の既得権保護政策に食い物にされた被害者だ!…という内容で、私たちの年代で(文系の)大学院まで行った人ならばすでに体感している事実だろう。私が未練を感じつつも研究生活から「降りる」ことにしたのも結局はそこだし(それだけでもないけど)。今の日本の労働環境は世代間問題なくしては語れないのか。
論調が割と感情的でこれもまた「これでもか!」感のある本なのだが、なんせ著者が当事者なので仕方ないというか、訴える力はある。そして最終章では大学院の今とは違ったあり方が提示される。大学教員のポストは今後少子化で先細りし続けるしかないが、一度社会に出た人などがさらなる知識や教養を身につけるチャンスを与える場として活用することはできる、また大学院を修了した博士や博士候補たちも、大学教員以外の場で、より豊かな社会を作り上げていくために自分の力を活用することができるだろう、というのだ。そんなに簡単にいくかいな!という素朴な疑問もあるが、現在の状況を改善するためにはそういう方向で模索していくしかないのだろうし、それはそれで明るい未来を描くことは可能かと思う。