永遠の途中

永遠の途中 (光文社文庫 ゆ 3-3)永遠の途中 (光文社文庫 ゆ 3-3)
唯川 恵

光文社 2007-08
売り上げランキング : 3842
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
同期入社の二人の女性が、ひとりは結婚退職して主婦の道を、ひとりは独身のまま仕事の道を生きていく。ふたりがお互いを(つまりは自分が生きなかった可能性を)意識し、嫉妬し、反発しながら年を重ねていく様子を(27歳から60歳まで)、それぞれの視点から交互に語っていく。
ふたりのキャラクターはある意味で純粋化されすぎているきらいもあるかもしれない。でも「仕事か家庭か」という二択はやっぱりどんな女の子も(いまだに)抱えている問題で、多くの人はふたりのどちらかに肩入れしながら、もうひとりの気持ちにも部分的にせよ共鳴してしまうんじゃないだろうか。
終盤、「社長って後悔したことありますか?」と問われた主人公(仕事側のヒト)が「どうしてもっと、自分の生き方にもっと自信を持って来なかったのだろうってことかしら」と応える場面がある。ここにきて、この小説は女の子だけのものではなくなる。自分が生きてきた人生とは別の人生を思い描いて、その可能性に嫉妬する。どんな人でもあることだと思う。でもそれがどんなに無駄なことか。人生は一度しか生きられないのだ。
この本は唯川恵が好きだという友人がうちに遊びに来た時に、読み終わったからあげるといって置いていったのだが、まんまと気に入ってしまった。こういう視点切り替えモノの小説は好きなんだよね。読後感もさわやかで、生きる元気と覚悟をもらえたような気がする。