定刻発車

定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?
三戸 祐子

新潮社 2005-04
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秒単位で運行する日本の鉄道の正確さは、世界の中でも類を見ない。なんせ一分遅れを「遅延」と認めながら定時運転率が9割を超えるのだからクレイジーである。(ヨーロッパなど先進国でも15分でやっと「遅れ」と数えるような国が多いのだそうだ)
その驚異の正確さのルーツが江戸時代にある!という論は荒唐無稽にも聞こえるが、妙に説得力がある。たくさんの人と物を予定通りに動かさなければならない参勤交代という制度の中で作られた、宿場間の所要日数を記したダイアグラム。これを見るだけでもこの本を買う価値ありだ。
日本固有の地理的・歴史的背景の上に根付いた鉄道というシステム。ホームや駅舎の設計、微妙な読みでダイヤを引く「スジ屋」の存在、そしてスムーズな乗降をするべく訓練されたわれわれ乗客の一人一人も毎日の定刻発車を支える要素の一つである。日本人、とりわけ都会の通勤電車に揺られたことのある人にとって大興奮の一冊となることは間違いない。
書かれたのは先般のJR西日本の事故より前なので、もちろん事故についての言及はないが、日々の安全運行がいかに奇跡的なバランスの上に成り立っていたかがわかり、あらためて考えさせられるものがある。今後筆者の分析が披露される機会があれば是非読みたいと思う。