変えてゆく勇気

変えてゆく勇気―「性同一性障害」の私から変えてゆく勇気―「性同一性障害」の私から
上川 あや

岩波書店 2007-02
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著者は性同一性障害で男性から女性へ性別を変えた世田谷区議会議員。自分の性に違和感を持った幼少時代から、それを認め変えていく過程、少数者としての生きにくさとそれを変えるために議員になり、社会の声なき声を拾いあげ紡いでいく活動を記す。
自分の性に違和感を持つというのがどういうことか、感じたことのない自分に本当の意味で実感することはできない。しかし性的少数者の存在を「想定しない」社会に傷つき、ひたすら「自分らしく、人間らしくありたい」と願う筆者の切々とした筆致は読む側の共感を誘うもので、読みながら何度も涙ぐんでしまった。彼女がそうして周囲の共感と理解を勝ち取り、この社会を少しでも人間にやさしい場所に変えていこうとしていることがよくわかる。
サラリーマンもOLも経験した彼女の「男も女も楽じゃない」という感想は、どんなフェミニストの言葉よりも説得力があるし、障害者や外国人など少数者の存在を想定しない社会の仕組みがどんなに彼らを冷たく排除しているか、我々のイメージする「フツウ」がどんなに狭量なものか、当事者の声ほど訴えかけるものはない。
声を出すことができない人たちの声なき声に耳を傾けることは、「フツウ」に生きている者にとっては簡単なことではない。彼らが声を上げることができるようになるために、それを拾いあげてくれる彼女のような存在が一人でも増えればいいと思うし、自分もそうなっていかなければいけないと思う。