言葉のない世界に生きた男

言葉のない世界に生きた男言葉のない世界に生きた男
スーザン シャラー Susan Schaller 中村 妙子

晶文社 1993-07
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生まれてから二十七歳になるまで、言葉も「言葉」という概念さえも持ったことのない男、イルデフォンソ。パートタイムの手話通訳として聞こえない人たちに教えるクラスで働くことになった筆者が、全身で語りかけて彼に「言葉」を伝える。はじめは筆者の動作を真似するだけだったイルデフォンソは、やがて「ネコ」という言葉をきっかけに、物に名前があることを理解する。彼が「天啓」を受けるシーンは感動的だ。
人間にとって言葉というのは自然なものに思えるけれど、それを獲得するのにものすごい飛躍を経験しているんだなーということを実感する。イルデフォンソが言葉よりも先に数の概念を理解したとか、名詞はわかりやすいけれど動詞はなかなか理解できないとか、時間の概念が抽象的でとても難しいとかいう話もとても面白かった。一度わかってしまうとあまり違いは感じないけど、より自然で身につけやすい概念と、そうではない概念と、レベルの違いがあるのだね。
この本は『みんなが手話で話した島』と一緒に先輩先生が貸して下さったもの。ほんとに面白かった。多謝。