安楽死のできる国

安楽死のできる国安楽死のできる国
三井 美奈

新潮社 2003-07
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安楽死を考えるなら必読の入門書であると同時に、すぐれたオランダ文化論でもあると思う。インタビューや事例が中心の記述で勉強になった。
個人の自己決定権を尊重する個人主義が確立していること、医療の透明性が確保され、心身両面の診断が可能なかかりつけ医が存在すること、寝たきりになっても安心して生きながらえることができる福祉制度が保証されていること。これらが確保されないうちに安楽死を認めるのは危険であるという。オランダは一応この前提をクリアしているのね。
それを考えると日本で認めるのは難しいだろうな。「家族に迷惑をかけたくない」とかいう理由で自己決定「させる(させられる)」ことになるのはコワイ(けど、たぶんそうなる確率は高い気がする)。
にしても、「意味のある死・意味のある生」を認定するということは「意味のない生・意味のない死」を決めることでもあって、それを人間がしちゃうのってやっぱり越権行為なんじゃないかという気がしてしまう。その判断をせざるを得ない状況になってしまっているのが、現代医療の悩ましいところなのかもしれないけど。