ニートって言うな!

「ニート」って言うな!「ニート」って言うな!
本田 由紀 内藤 朝雄 後藤 和智

光文社 2006-01-17
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ニート」という言葉が本来の意味*1から外れて「情けない若者・危ない若者」を非難する言葉になっている日本の現状を批判。本人と家族に責任を負わせ治療・矯正を目指すのではなく、労働市場の構造そのものを検討しなければならないと説く。
「精神論ではなくシステムを」という方向性は、先日読んだ「日本を滅ぼす教育論議」とも共通するが、全く正しいと思う。
本書の筆者たちは、「ニート」という言葉を広めるきっかけを作った玄田有史小杉礼子両氏を厳しく批判している。玄田有史なんかは「若年層の不安定就労は、中高年の雇用を守るための犠牲になっているという構造的な問題だ」と言っていた気がする*2ので、真正面から対立する立場ではないと思うのだが。まあ彼の「14歳で就労体験を」とかいう提案はかなり精神論に傾いていて、私も胡散臭いと思ったけど。
しかしマスコミのどーしょもない煽りは本当に何とかして欲しいと思う。ニートに限らずキャッチィな単語はマスコミに乗ると暴走するんだよね。「負け犬」とか「下流」とかもそうだよなぁ。初出の時点での微妙なニュアンスは全部流されて、語感に持って行かれてしまう。言葉の力って怖い。というより、受け取る側が頭を使ってないだけか。

*1:「Not in Education, Employment or Training」→「NEET

*2:『仕事の中の曖昧な不安』