上海

上海 (講談社文芸文庫)

上海 (講談社文芸文庫)

昔の女を引きずって据え膳を決して食わないニヒリストが外国で女にモテまくる話。というと身も蓋もないが。五・三〇事件を題材に、戦争前夜の国際都市・上海の混沌を描いた小説。新感覚派時代の集大成と言われるだけあって、視覚・心理両面の描写が鮮やか。後半部の緊張感ある展開もよかった。「俺の身体は領土なんだ」なんて台詞、かっこいいじゃない。
横光づいて他の作品も読んでみたのだが、「機械」「マルクスの審判」など短編が面白い。ちょっと演劇みたいなところもあって。いわゆる病妻物の「春は馬車に乗って」「花園の思想」もなかなかいい。この二作はセットらしいけど、私としては後者の方が好きだわ。