<恋愛結婚>は何をもたらしたか

恋愛結婚は何をもたらしたか (ちくま新書)

恋愛結婚は何をもたらしたか (ちくま新書)

結婚=幸福=恋愛という深くからみあうイメージについて、明治期からの言説を通して検証する。西欧ロマン主義的「恋愛」はキリスト教を土台とした「一夫一婦制」と結びついた「恋愛結婚」となり近代化途上の日本に取り入れられ、さらに「優生学」と結びついて「国家のための生殖」に重点が置かれるようになる。
結婚という個人的なイベントが国家から法的に保証されることに意味はあるのかどうか、と考えるようになったのはごく最近のことだけど、それが優生学と結びつくとなればなおさらアヤシイというかオソロシイ。現代では表面上見えにくくなっている分だけ余計に。
ところでこの本の著者の執筆姿勢はなかなかいいなあと思った。ジェンダーとか優生思想とか微妙な問題を扱っているだけに、誤解を招かないよう慎重に言葉を選んでいるし、引用の出典を手際よく示してくれるのもありがたい。『オニババ化する女たち』の三砂ちづる氏なんかはその辺が無防備というか不用意というかなのでいらぬ反感を買うのではないかしら。