続明暗

続 明暗 (新潮文庫)続 明暗 (新潮文庫)
水村 美苗

新潮社 1993-10
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漱石の小説で好きなものはいろいろあるが、「明暗」は中でも上位に入る。女性の描写が他の作品と比べてとてもリアルに感じられるからだ。お延にすっかり感情移入して読んでいた私は、津田や吉川夫人にイライラしながら、中途で終わってしまった作品の続き見たさで身悶えした。
というわけで、いつか読まねばと思っていた「続 明暗」をようやく読み終えた。まず文体が漱石っぽいのに驚く。すごいすごい。そしてストーリーも面白い。お延を応援してしまうのは相変わらずだが、清子にも好感を持てるのは、女流作家ゆえだろうか。結末も、漱石が実際に書こうとしたのがどのようなものかはわからないが、一つの可能性として満足できるものだったと思う。
読んでいて、結婚が経済問題であるというテーマも底に流れているのだと気付いた。清子は「三四郎」でいえば美禰子なんだな。その上で清子が津田を選ばなかった理由をああいうふうに語ったのは、或意味とても現代的なのかも知れないという気がするが、ストーリーの展開の上でも必然的なものにし得ている。
それにしても、文豪の後を引き継ぐという大仕事をなした作者には頭が下がる。相当読み込んで書いたのだろうなぁというのがわかるから。高校の授業で「こころ」を読んだ時には、お嬢さん(奥さん)の視点から小説を書き直すことを夢想したものだったが、今あらためて断念した。そりゃー大変なことですよ。