「日本人論」再考

「日本人論」再考「日本人論」再考
船曳 建夫

日本放送出版協会 2003-11
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文化人類学者による「日本人論」論。
西洋の産物である「近代」をめざし達成した日本人が、自らは非西洋であることによって、成功しても失敗しても「転校生の不安」を抱えることになり、その不安を解消するために説明を求め、日本人論が生み出されるのだという。青木保の『「日本文化論」の変容』が戦後の日本文化論を扱っているのに対して、本書はさらに広く明治以降の日本人論を扱う。巻末の関連年表がなかなか便利。
ゲイシャとサムライに見るオリエンタリズムの反映についての話が面白かった。宗主国の男性と植民地の女性という組み合わせの恋愛関係は描かれるが逆はなく、政治的な権力関係と男女間の権力関係が対応しているとか、そう言われればなるほどという感じ。確かに西洋人と非西洋人のカップルをイメージすると、西洋人が男・非西洋人が女という組み合わせの方が思い浮かびやすかったりする。都会男と田舎娘とかもありだよな。今後異国・異文化間のラブストーリーを見る時は設定に注目しちゃいそう。
それから「高貴な野蛮人(noble savage)」*1という概念も新鮮だった。たとえばラストサムライなんかは日本に対して好意的に描かれてはいるけれど、オリエンタリズムから自由ではないんだなあ、というのがわかる。

*1:高貴さを持つものと相応の敬意は払うが、文明の基準からすれば時代遅れのものとして同等には扱わないという異人・異文化に対する見方。