戦争と平和を学ぶ

三学期は戦争と平和を学ぶというテーマで現代文の授業を行った、ブックリスト。とにかくいろいろ読んでみようと言うことで、時間をかけて読解したものもあれば、プリントでさらっと紹介して終わったものもある。

 

『東京プリズン』赤坂真理河出文庫

本の学校になじめず留学したアメリカの高校で「天皇の戦争責任」をテーマにディベートをやらされる羽目になる主人公。天皇とは誰なのか?時系列が交錯し虚実入り交じる不思議な感覚の小説。ディベート場面の一部を紹介。

 

『総員玉砕せよ!』水木しげる講談社文庫)

自身も出征し左腕を失った水木しげるがマンガで描く戦争。不思議にのんびりした空気がただよう前半の兵士の日常と、最後の壮絶な玉砕のシーン、そして作者あとがきを紹介。

『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル池田香代子訳(みすず書房

ホロコーストの生存者であるフランクルが「心理学者として」自らの収容所経験を内側から語る。序文にあたる部分を読み、私が2013年に訪問したアウシュビッツ・ビルケナウの写真を紹介した。

「確認されない死のなかで」『望郷と海』石原吉郎ちくま文庫

シベリア抑留を経験した詩人・石原吉郎強制収容所で出会った死を回想し、「名前」をもつ一人の人間として生き死ぬことの重要性を述べ、名を消し数に還元することを批判する。いくつかの問いに答える形で読解。

『石の声』金城満(佐喜眞美術館/DVD・ブックレット) 佐喜眞美術館ミュージアムショップで購入可能 http://sakima.jp/?page_id=857

沖縄戦の犠牲者数と同数の23万余りの石に番号を打ち、積み上げるという、1996年に行われた芸術プロジェクトの記録。

『子どもと話す文学ってなに?』蜷川泰司(現代企画室)

「石の声」について語った箇所を紹介。ホロコーストにおいて人間に番号を打つことが悪意と暴力でしかなかったものが、「石の声」では祈りを込めた芸術表現として成立するのはなぜか。芸術の条件とは何なのか。いくつか問いに答える形で読解。

cocoonコクーン今日マチ子秋田書店

ひめゆり部隊に着想を得て描かれた、沖縄の少女たちの戦争。一部を紹介。

『夕霧の街 桜の国』こうの史代双葉社

原爆投下から十年を経た広島の街を舞台にしたマンガ「夕霧の街」全文を読解。グループごとに質問作りをした。

『七月七日』古処誠二集英社文庫

主人公は米軍で語学兵として戦う日系アメリカ人二世「ショーティ」。収容所に入れたアメリカを憎みつつ、そんなアメリカに日本人として自らの外見と言語を利用して貢献してみせるしかない。二つの祖国、言語、アイデンティティが戦争という状況でねじれゆさぶられる小説。冒頭を紹介。

虐殺器官伊藤計劃(ハヤカワ文庫)

現代の、そして近未来の戦争を描くのは作家の想像力。SF小説の冒頭を紹介。

『増補 八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学』佐藤卓己ちくま学芸文庫

なぜ8月15日が終戦記念日となったのか。「玉音写真」の嘘を暴くところからはじめて、メディア研究が明らかにする8月ジャーナリズムの欺瞞。これも一部を紹介しただけ。